自社企画

第3章3話 信頼の正体

株式会社コ・ラボの企業サイトブログ「自社企画」へようこそ。このブログでは私達のオリジナルブランド「NICELY」で扱う予定のMilkomedaシリーズの誕生を書いております。第3章ではNICELYを作るきっかけになったエピソードをご紹介しています。


数年後の会社の姿を、正確に予測できる人なんていない。そんなお話です。
どれだけ誠実に付き合ってきた相手であっても、それは同じなのでしょう。
ある製造卸の会社と、私たちは長く仕事をしていました。

先代の社長は、言葉を選ばずに言えば、情熱とパワーで全てを押し通すような人でした。
新しい商品の必要性を説き、たとえ目先の利益が出なくても、年単位でのビジョンを描き、それを現実にする力を持っていたのです。

ときには、乱暴にも感じられる依頼もありました。
報酬は固定の月額。
たしかに相場よりは高い額だったのかもしれませんが、その分、仕事量は尋常ではなく、「これでは割に合いませんよ」と、思わず弱音を吐いたこともあります。

そのときは、怒りにも似た感情を抱いていたのですが。
けれど、後になってわかったことがあるのです。

それは私たちへの信用の証だったのだ。

しかし、ある日、その社長が体を壊されたと連絡を受けました。
回復を祈る間もなく、突然の訃報が届き、あまりに急で、言葉が出なかった事を覚えています。

後を継いだのは、別の方で、そこから会社は大きく変わりました。

方向性は180度転換。

商品戦略も、開発方針も、私たちとの関係性も すべてが変わっていき、私たちへの依頼は、次第に減り提案をしても「検討します」で終わるようになりました。
ほどなくして、契約は終了。

悔しくなかったかと聞かれれば、嘘になります。
でも、それ以上に強く感じたのは、空虚さでした。

金額ではない。
私たちが本当に求めていたのは、
「職人として、必要とされている」という手応えだったのでしょう。


ただ図面を描くのではなく、
“誰かのビジョンを一緒に形にしている”という実感。
それこそが、私たちにとっての報酬だったのだと、気づいた瞬間です。

信頼は、数字で測れない。
そして、信頼こそが、ものづくりの根幹にある。

変わってしまった関係性を、無理に追いかけることはしませんでしたが、私はこの経験を忘れないと決めました。

信用されるということが、どれほど尊いかを教えてくれた企業との時間を。

あの頃の仕事は、たしかに大変でした。
けれど、あの忙しさこそが、
“職人として技術者として生きている”という感覚をくれたのかもしれません。

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