自社企画

第2章 最終話 夢に破れた者たちが

株式会社コ・ラボの企業サイトブログ「自社企画」へようこそ。私達のオリジナルブランド「NICELY」で販売予定のMilkomedaシリーズの誕生を私の記憶をたどりながら書いていますが、本編でもまだMilkomedaシリーズは登場していません。気長にお付き合いください


私の勤めていた会社では、原則として──
ひとつの案件を複数の技術者で担当しない、というルールがありました。

責任の所在を明確にするためです。

でも、ずっとそのままというわけにもいきません。
補助や代打が回ってくることも、たまにはある。

当時、私は関西圏のお客様を担当していましたが
ひょんなことから、東京出張の命が下りました。

朝5時56分の新幹線の始発に乗ってお客様の元へ 

お互いに重要なプロジェクトでしたから夕方まで商談は続きましたが、仕事終わりで私がプログラマとして働いていた時にお世話になったノブさんとお会いできる時間を取ってもらいました。

そこで私は、それまでの経験を共有させてもらい、今忙しくしているという現状報告を済ませました。

そしてどんどんと話は深くなり、何がその言葉を引き出したのかをはっきり覚えていませんが、営業部長からグループ会社の社長になったノブさんは

「今の社会は、夢に敗れた人たちが作り上げたんだ。
もし皆の夢が叶っていたら、この世はスポーツ選手と芸能人とお姫様で溢れていたはず。
けれど現実には、何かに敗れた人が、実働して世界を動かしている。」

そんな言葉だったと思います。ハッとしました。

忙殺されて自分のコンプレックスが薄れかけていた時ですが、私は確かに何かに敗れて若い頃に思いもしなかった職業についています。

それは、理想とは違ったかもしれない。

でも、そこに「人の役に立て」という教えがあった。

この日、私はその原点に
再び立ち返ったのです。

会社に戻って、姉に聞いてみました。
「何かに、敗れた経験はある?」
少しだけ間を置いて、姉は答えました。

「んー大学へは進学したけど……これじゃないって思った。
それで頑張って、美容師の資格を取った。
でも肌に疾患が出て、ドクターストップ。
元々やりたかったことは、もうどこかに置いてきた。」

……やっぱり、誰もが何かに敗れている。

それでも、働き、動き、この世界を回している。

ノブさんが言っていたのは、こういうことだったのだと。

たったひとつ、後悔があるとすれば
ノブさんが、何に敗れたのかを、聞かなかったこと。

私は何かに敗れた。

そして、今の私は
何かに敗れた誰かの、力になれることがあるだろうか。

そういえば、昔、偉そうに言ってたっけ。
「ブラジャーの問題を、自分で解決する」って。

学生時代に抱えていたコンプレックスは、
今では、次の原動力に変わっていた。

それまでモノクロに染まっていた私の視界に、

少しずつ、色が戻り始めた瞬間でもありました。

第3章へ続く

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