株式会社コ・ラボの企業サイトブログ 「自社企画」へようこそ。ここでは株式会社コ・ラボのオリジナルブランド「NICELY」で扱うMilkomedaシリーズの誕生ストーリーを投稿しています。今回は私が実際に経験した型紙設計士として修業時代のお話です。
一つのサイズから、他の展開サイズ分の写しにも慣れてきた頃。
大きなアドバイスがあったかというと、そうでもありませんでした。
「このサイズなら、このくらいの大きさで。この順番で描けば、たぶん大きくは崩れない」
そんなふうに、自分なりの感覚を頼りに、写し取りを進めていました。
これは、完全に“独学で得た境地”です。
けれど、指導という“後ろ盾”がないままだと、どこか腑に落ちない。
カーブ尺を使って、それらしい線は引けるようになった。
でも、それが本当に“正解”なのか
会社のやり方として合っているのか、
技術者としての組み立てが正しいのか、
ずっと、心のどこかに引っかかっていました。
型紙の写し取りは、何度も何度も繰り返されました。
「まあ、なんとなく慣れてきたかも…」そんな頃、突然“簡易試験”のような課題が出されます。
内容は
「なにも見ずに、描け」。
与えられたのは、完成予想のラフなデザイン画。
あとは白紙の大きな紙、カーブ尺、定規、鉛筆──それだけ。
結果は、惨敗でした。
もはや“下着”と呼ぶにはほど遠い、謎のモノができあがりました。
でも、それ以上に衝撃だったのは──親父でした。
出来損ないの図面をちらっと見た父が、ひと言。
「脇の直線から引き始めてるやろ?」
……え? なぜ分かる!?
父は私が作業している姿なんて見ていません。
別室でテレビを見ていたはずです。
なのに、成果物だけで、私がどこから描き始めたのかを即座に見抜いたのです。
父は、私の図面がなぜ破綻していたのか、どこでバランスが崩れたのかを、淡々と解説してくれました。
そして、設計の中で本来は“あとで消してしまうはずの補助線”の重要さを教えてくれました。
父からの指導は、後にも先にも──この一度だけでした。
私生活では
父から何かを学んだ記憶なんて、正直ありません。
でも、あの一瞬だけは、心から思いました。
「すげー……」
父というより、“職人”として。
「何かを極める」というのは、こういうことかと。
……ちなみに。
私にも、今では10年以上のキャリアがありますが──
人の型紙を見て「どこから描き始めたか」なんて、いまだに分かりません。
そして、その一度きりの父の指導が終わったそのタイミングで、
今度はさらなる試練が訪れます。
「現場に出ろ」
……いやいや。
私、まだ“生地の特性”も“縫製の常識”も知らないんですけど……?
この会社、頭おかしいのでは?とすら思いました。
でも命令は変わらない。
お客様のところに出向いて、修正点を聞いてこい──それが任務です。
幸いだったのは、今回対象になるのが「私が引いた型紙」ではなく、
会社として既に参画していた“進行中の製品”だったこと。
ちょうど刷り上がったばかりの名刺を握りしめて、
緊張と不安でいっぱいのまま、
私は、初めて“お客様のもとへ”向かいました。
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