自社企画

第4章3話 特許第7208639号

株式会社コ・ラボの企業サイトブログ「自社企画」へようこそ。オリジナルブランド「NICELY」で販売するMilkomedaシリーズの誕生を投稿しております。今回のお話で特許取得について触れています。お金も、時間も結構かかります。何よりも構想を練って上手くいくか否かの時が一番、胃が痛かった記憶があります。


私は、前中心幅を10mm以下に設計したブラジャーのイメージ図を描きました。
それがこの図です。

このような構造であれば、胸骨体と乳房を圧迫せずに支えることができる。
それでいて、左右の胸をしっかりと中央へ導く補整力も失われない。

この形が、きっと“正解”に近い。

私はすぐに設計に取り掛かりました。
前中心の幅を10mmに設定し直すことで、理論上の課題はすぐに解消できる。

けれど、ひとつ問題が残っていました。

前中心を細くすれば、ワイヤーが通常の形では対応できなくなる。
当然、ワイヤーの形状も引き直す必要があります。

けれど、私は幸運でした。
これまでに数えきれないほどの現場を経て、型紙の設計だけでなく、ワイヤーそのものの設計にも関わってきた経験があったのです。

私がその知見を総動員して引いた新しいワイヤーラインは、従来の製品とは異なる、独自の曲線を描いていました。

そして、私にはもう一つの強みがありました。
国内のある老舗のワイヤー製作企業と、業務を通して非常に信頼関係のある状態にあったのです。

思い切って、開発協力をお願いしたところ——

「あなたが描いた線通りのワイヤー、うちで起こしてあげますよ。」

そう言って、快く引き受けてくださったのです。

これで、構造的な問題はすべてクリアできる。
理論も、図面も、パーツも、揃った。

あとは……
どう縫うのか?

この新しい形は、従来の縫製ラインには存在しない。
単純な直線でも、量産を前提としたテンプレートでもない。
これを、“現実の製品”として縫い上げる方法を見つけなければ、すべての構想は机上の空論に終わってしまう。
次なる壁は、「縫製」だったのです。

ここからは、縫製の話です。

左右のワイヤーを収めるためのワイヤーループを、
前中心の極めて狭い領域でぴたりと重ね合わせる
それでいて、縫い代が干渉せず、ワイヤーの“入らない空間”を正確に確保する

これは、口で言うほど簡単なことではありません。

私は幾度となく、縫製現場にサンプルアップを依頼しました。

「……無理です」
『じゃあ、この順番で縫えない?』
「やっぱり無理ですよ。本生産では形が保証できません」
『……ならば、この工程を追加しましょう』

そんなやり取りを、何度も、何度も、重ねました。
何度目かの試作で、ようやく理想に限りなく近い形での縫製が実現しました。

ブラジャーの問題点を知ってから、実に8年。
コロナが発生してからも、すでに1年以上の月日が流れていました。

「ああ……これで、ようやく“生産できる形”が確定した」

その瞬間、私は心の底からそう思ったのです。

そして
2020年3月27日。弁理士を通じて、特許申請へ。

特許申請から実際に権利が認められるまでも時間がかかります。
また権利化をする場合、その前に商品として発表する事はできない。
権利化しても意味のないケースがある。
申請が拒絶されるケースがあるという事を実体験として学びました。
また申請にも費用がかかります。

よくやり切ったなと我ながら思いますね。

初めての申請からおよそ3年後の2023年1月11日。

構想から技術、設計、縫製まで。
すべてを一つの“生きた構造”として形にしたこの技術が、
ついに、特許という証明にたどり着きました。

これが、Milkomedaブラジャーにおける
「ふたつの構造のうち、最初の一つ」です。

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